「中国人だけが最高級の材木を買い付けるけど、ラオスやカンボジアでは取れなくなっているね」
伐採規制が機能しているも言えますが、そもそもかつてほどのローズツリーがなくなってきているのかも知れません。
世界食糧農業機構(FAO)によると、1990年はカンボジア国土の73.3%が森林に覆われていたそうです。しかし2015年のその数値は53.6%にまで落ちています。フック氏は「森に行ってもローズツリーはもうありませんよ。タイの保護地区にでも行かない限りね。供給されなくなったということですよ」と言います。世界資源機構の報告では2001年から10年の間にカンボジアの樹木は世界で最も速く減っていて、ゴムのプランテーションにとって変わられています。
理由はともあれ、資源はかつてほど豊かではなくなっているので、ドンキーの工房主達は他の市場へ進出したがっています。
「計画ではヨーロッパ市場を目指すことになっていますが、工場の環境はヨーロッパの基準にあっていません。製品だけではなく、労働力と労働条件がセットになってなければいけないのです。中国並みのシンプルな条件だったら転換も楽なんでしょうけど」
これはヨーロッパでは常識的で、2013年ベトナムがヨーロッパに輸出したのはわずか5%で、拡大が望まれます。
2015年秋、ベトナムはEUとVPAの締結交渉へ乗り出しました。VPAはEUとその他の国との間で結ばれる包括的貿易合意のことです。これが合意すれば、ベトナムの木材と加工技術のヨーロパ輸出が合法的に許可されます。
そのような許可をFLEGTと言います。現在のところインドネシアだけがその免許を持っています。この仕組みが機能すれば森林は保護されますが、ナン氏は、自分の小さな工房ではその基準を満たせないと思っています。
「もしFLEGTが国内で適用されると、うちみたいな村はみんな問題になってしまう。」ドンキーの蚤の市や工場はこの点を強調します。実際ナンの工場は機械と木屑に溢れていて、中国人が高級家具の完成品にしか興味がなく作業工程を全く気にしないことが解ります。
結局ナン氏の仕事は闇に包まれたままです。規制と資源の枯渇で中国向けの高級素材は手に入らず、EUに売るための法的基準を満たすほどの品質も保てません。ベトナム国土の1,400万ヘクタールは森林ですが、370万ヘクタールはアカシアと
ユーカリのプランテーションです。これらは高級家具には使えません。
EIAの推進責任者、ヤゴ・ワドリー氏はEUとの合意がこの状況を改善するのか懐疑的です。
「EUとベトナムが11月にハノイで合意した内容は、ベトナム国内市場から違法木材を締め出す代わりに、EUから輸出許可をもらうものになっています。」
ワドリー氏によれば、VPAの最も重要なポイントは合意されておらす、すべてはベトナム政府が取り決めをどれだけ厳格に遂行できるかにかかっているのです。
「理屈ではベトナム政府が約束した決まりが可能ですが、もし実際に実行すれば組織的に大量の違法木材を国内市場から動かさなければならないのですよ。」
これは現在のドンキー村の仕事のやりかたを根底から引っくり返すものです。合法な木材を調達しなければならないのです。
「しかしこの理屈はどこかをモデルにで実行しなければならないでしょう。政府が本当に違法木材の流入を防ぐ気があるのか、その能力があるのかを示すためにも必要です。」
その実行役は違法木材の財源や汚職の鍵を握る森林省の監視に委ねられます。
ドンキー木材協会のヴン氏は中国を排除してクリーンな取引に向かわなければならないことは分かっています。彼は町全体に大きな投資を望み、零細工場でも技術を進化させてより基準の厳しい市場にも耐える品質のモノを作らせるべきと考えています。
「資源を移すことでリスクは減り、より安全になる。そして合法的になる」彼は言います。